ドリルの基礎知識:穴あけ加工を成功させるためのポイント

ドリルとは? 基本構造と特性

ドリルは、穴をあけるために使用される代表的な切削工具です。一般的なドリルの先端角は118度で、この角度により切れ刃が直線状になり、安定した加工が可能となります。先端角が118度より小さい場合、刃先は凸型に湾曲し、バリの発生を抑制する効果があります。一方、先端角が大きいと、刃先が凹型になり、切りくずの分断や排出に効果がありますが、切れ刃の強度が低下するため、安定した加工には不向きです。硬い材料を削る際には、刃先の強度を高めるため、先端角を120〜140度に調整することもあります。

ドリルの種類と構造の違い

近年、刃先を交換できるチップ交換式のドリルや、刃部を取り換えられるヘッド交換式ドリルも普及していますが、ソリッドドリルが依然として主流です。ソリッドドリルは、柄の部分と刃部が一体で作られており、切れ刃が摩耗した場合には、研削といしで再研磨して使用を続けることができます。刃先を研ぐ際には、両刃を等角に研ぐことが重要で、先端角を118度に合わせて均等に研ぐことで精度の高い穴あけ加工が可能となります。

ドリル使用時の注意点と品質管理

ドリルで穴をあける際、ドリルの外径よりも穴径が大きくなることがあります。ソリッドの高速度工具鋼(ハイス)製ドリルでは、穴径がドリル外径の1%程度大きくなるとされ、超硬合金製ドリルでは20〜50μm程度の差が生じます。穴径がこれ以上大きくなる場合は異常で、その原因のひとつとしてリップハイト(切れ刃の高さの差)が挙げられます。リップハイトが大きいほど穴径が大きくなるため、0.02mm以下に調整することが望ましいです。
さらに、ドリル使用時には「歩行現象」が発生することがあります。これはドリルが回転中に中心部が不安定になる現象で、シンニング(刃先の形状を整える加工)が不適切な場合に起こります。適切なシンニングを施し、ドリルの送り量を適切に設定することで、この現象を抑えることができます。

ドリルの分類と選定基準

ドリルはその材質、構造、シャンクの形状、溝のねじれ具合などによって多くの種類に分類されます。例えば、構造では一体型のソリッドドリル、刃先交換式、ヘッド交換式などがあります。シャンク形状では、ストレートシャンクドリルやテーパシャンクドリルなどがあり、溝の形状ではねじれドリルや直刃ドリルが存在します。ドリルの選定時には、加工する穴の深さや精度、使用する素材などに合わせて適切な種類を選ぶことが求められます。
ドリルの長さは、全長と直径の比(アスペクト比)で表現され、短いスタブドリルから長いスーパーロングドリルまで、加工の目的に応じて選ばれます。特に深い穴をあける場合には、切りくずを効率的に排出できるように溝長を適切に設定する必要があります。

特殊ドリルと高精度加工

特殊用途のドリルも存在し、例えば「ガンドリル」は非常に深い穴を高精度にあけることができます。このドリルは内部給油構造を持ち、切削油剤を刃先に供給することで、切削熱を効果的に除去し、工具の寿命を延ばします。その他、「ルーマ形ドリル」は電子基板の小径穴加工に、「スベードドリル」は大径の穴あけ加工に、「段付きドリル」は異なる直径の穴や面取りに用いられます。
いずれのドリルにおいても、加工精度を高めるためには、適切な切削条件を設定することが重要です。ドリルの切れ刃の摩耗具合から切削条件の適正を判断し、適切な回転数と送り量を設定することで、効率よく精度の高い加工が可能になります。また、出口での送り量を減らすことで、バリの発生を抑制することもできます。

ドリル選定のポイント

ドリルはその用途に応じて適切に選定することで、加工精度や効率を大幅に向上させることができます。ドリルの先端角や刃の形状、使用する素材、加工する深さなど、細かな条件を考慮して選ぶことが重要です。特に、チップ交換式やヘッド交換式のドリルは、コスト削減や環境への配慮が求められる現代の製造現場で注目されていますが、精度を重視する加工にはソリッドドリルも依然として重要な役割を果たしています。最適なドリル選定によって、製造の現場での成果を最大限に引き出すことが可能です。

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