フライス盤での穴加工と溝加工:リーマ、中ぐり、サイドカッタ、メタルソー

フライス盤で使われる切削工具

フライス盤で使われる切削工具には様々な種類がありますが、この記事ではリーマ、中ぐり、サイドカッタ、メタルソー等について解説します。その他の工具については以下の記事をご参照ください。
エンドミルの基礎知識と選び方:加工効率を高めるためのポイント
ドリルの基礎知識:穴あけ加工を成功させるためのポイント
フライス加工の入門講座:工具選定と加工精度を高める秘訣
タップ加工の基礎知識:種類、選定、加工のコツを徹底解説

リーマと中ぐり:高精度な穴加工のための技術

リーマと中ぐりは、ドリルで開けた穴の精度を高めるために使用される切削工具です。ドリルで加工された穴は見た目には真円に見えますが、実際には形状がわずかに歪んでおり、内径寸法はドリルの外径よりも大きくなることがあります。また、穴の内部にはドリルが擦った跡が残り、表面が滑らかではないこともあります。こうした状況で、穴の真円度や内径寸法、真直度、仕上げ面の粗さが求められる場合に使用されるのが「リーマ」です。

リーマは、切れ刃を使って穴の内径を精密に仕上げ、さらにマージン部分で擦り潰すことで、内面の仕上げ面粗さを向上させます。この磨きの作用を「バニシ作用」と呼びます。リーマ加工を行う際の最も重要な要素は、適切な削り代の設定です。削り代の目安は直径で0.1〜0.5mmであり、工作物の材質やドリル加工後の表面状態に応じて調整されます。リーマ加工が成功するためには、リーマの取り付け精度(心ずれや回転振れ)、切削油の供給、切りくずの排出がポイントです。特に、心ずれと回転振れを0.5μm以内に抑えることが望ましいとされています。

リーマで加工可能な穴径は一般的にφ20mm程度までで、これ以上の大径穴には「中ぐり(ボーリング)」という加工方法が用いられます。中ぐりは、バイトという切削工具を使用して穴を広げる方法です。中ぐり加工は、複数の刃を使った荒加工と1枚の刃を用いた仕上げ加工に分類されます。仕上げ加工の削り代は直径で0.5mm程度が目安で、リーマ同様に精密な穴を加工することが可能です。

フライス工具による多様な溝加工

フライス加工には、削りたい形状に応じて様々な工具が使われます。例えば、「T溝フライス」はT字型の溝を加工する工具で、エンドミルで前加工を行った後に使用されます。「あり溝フライス」は、段付きのあり溝を加工するための工具です。これらの加工では、切りくずを効率よく除去することが重要です。切りくずが加工点の前方に溜まると、工具が切りくずを噛み込み、破損するリスクが高まるため、圧縮空気や切削油を用いて適切に排出します。T溝やあり溝の形状は、古くから機械構造部品の摺動部に広く利用されています。

特に鉄鋼材料を削る際には、フライス工具の刃に0.05mm程度のホーニングを施すことで、刃の損傷を防ぎ、長寿命化を図ることができます。あり溝加工などでは、測定器で直接測定が難しいため、測定用のピンと幾何学的関係を活用して寸法を確認します。

サイドカッタとメタルソー:溝加工と切断

「サイドカッタ(側フライス)」は溝加工に特化した切削工具で、「メタルソー」は溝加工に加え材料の切断にも使用されます。これらの工具は、エンドミルとは異なり、上向き削りでの使用が推奨されています。下向き削りでは、刃が工作物に食い込む瞬間に大きな切削抵抗が発生しやすく、刃が空転して折損するリスクが高くなります。一方、上向き削りでは刃が徐々に材料に食い込み、切削抵抗が少ないため、工具が折れにくくなります。ただし、上向き削りでは刃の摩耗が早く、工具寿命が短くなるため、使用する際には摩耗管理が重要です。

サイドカッタやメタルソーは、切れ刃が軸方向と平行についているため、切りくずがチップポケットに溜まりやすく、排出できる量が限られます。加工条件を過剰に設定すると、チップポケットの容量を超え、工具が破損するリスクが高まるため、適切な切込み深さと送り量の設定が重要です。例えば、切込み深さを小さくし、送り量を増やして複数回に分けて加工することで、熱の発生を抑えつつ安定した切削が可能となります。

各工具の特徴を理解した使い分けがポイント

リーマや中ぐりによる高精度な穴加工、フライス工具を用いた多様な溝加工、そしてサイドカッタとメタルソーの適切な使用により、さまざまな加工ニーズに応えることができます。各工具の特徴を理解し、使いこなすことで、効率的かつ精度の高い加工が実現し、製造現場での品質向上に寄与します。

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