バイトの多様な形状と用途:用途に応じた最適な形状選択の重要性
旋盤で使用される切削工具を「バイト」といいます。切削工具の中でも、バイトはその用途に応じてさまざまな形状が存在します。工業製品の進化とともに、バイトの形状や用途も日々多様化してきています。この記事では、日本工業規格(JIS)に定められているバイトの標準形状を中心に、どのような形状のバイトがどの用途に適しているのか、そして最近の工業製品に対応するためのバイトの進化について詳しく解説します。
バイトの基本構造については以下の記事をご参照ください。
バイトの基本構造と名称:チップとシャンクの役割を理解する
日本工業規格(JIS)のバイト形状
日本工業規格(JIS)では、旋盤用のバイトの形状が16種類定められています。これらの形状は、主に削る対象や用途に応じて選択されます。たとえば、外径加工や端面加工、内径加工など、加工する部位によってバイトの形状は異なります。代表的なバイトには「右勝手バイト」「左勝手バイト」などがあります。右勝手バイトは、一般的に使用される標準的なバイトで、工作物を正回転させた状態で右から左に向かって材料を削る際に使用されます。一方、左勝手バイトはその逆で、特別な用途にのみ使用されることが多いです。
工業製品の複雑化とバイトの進化
近年、工業製品のデザインや機能性が向上するにつれて、製品を構成する部品の形状も複雑になってきています。たとえば、スマートフォンのデザインは多くのユーザーにとって重要な選択基準の一つとなっており、それに伴い部品の形状も多様化しています。こうした背景から、バイトも単純な形状ではなく、製品に合わせた複雑な形状のものが求められるようになりました。
特に、NC工作機械(コンピュータ数値制御機械)の普及により、バイトの動きが精密に制御され、より複雑な形状の部品を削ることが可能となっています。これにより、刃部の形状を特注で成形する必要がなくなり、標準的なバイトを使用しても高度な加工が可能となっています。NC工作機械の登場により、切削加工の自由度が大幅に向上し、加工現場での生産効率も飛躍的に上がっています。
熟練したスキルを要する内径加工
バイトを用いた加工の中でも、特に高度な技術が必要とされるのが「内径加工」です。内径加工では、バイトを使用して穴の内部を削りますが、外径加工と異なり、切削点が直接目視できないため、熟練したスキルが求められます。作業者は切削点を見えない状態で操作しなければならず、音や振動を手がかりに、切削状態を判断することが必要です。
特に深い穴の場合、振動が大きくなり、切削点が不安定になると、加工品質に影響を与えます。振動が発生すると、切削面にムラが生じ、仕上げ面が粗くなってしまうため、振動をいかに抑えるかが技術的な重要課題です。振動を抑えるためには、バイトの形状や取り付け方法、加工条件(切削速度、送り量、切込み深さ)を適切に設定することが求められます。さらに、振動の発生状況をリアルタイムで判断するためには、切削中に発生する音や工具の挙動を常に注意深く監視することが重要です。内径加工は、バイトの選定だけでなく、作業者の技術や経験が特に試される作業です。
グラインダでの刃部成形
一部の特殊な形状を削る際には、標準的なバイトでは対応できないことがあります。そのような場合、グラインダを使用して刃部を成形し、加工現場でオリジナルの形状のバイトを作り出すことがあります。この手法は、特定の形状に特化した部品を作る際に重宝され、製造現場では日常的に行われています。
ただし、グラインダで刃部を成形するには高度な技術が必要です。また、作業時間もかかるため、標準的なバイトを使用してNC工作機械で加工を行うほうが効率的な場合もあります。それでも、標準的なバイトでは削れない形状に対応するため、こうしたグラインダによる手作業が今でも多くの現場で活用されています。
用途に応じたバイトの選択が重要
バイトの形状は、その用途や加工対象によって選択する必要があります。日本工業規格(JIS)の16種類の基本形状を基盤にしつつ、製品の複雑化やNC工作機械の導入に伴い、より複雑な形状のバイトが求められるようになっています。特に内径加工や特殊形状の加工では、バイトの形状だけでなく、作業者のスキルも重要な要素となります。
NC工作機械の普及により、標準バイトでも高度な加工が可能になりましたが、それでも特殊な形状の加工にはグラインダを用いたカスタムバイトが必要となる場合も多いです。バイトの選択と正しい使用方法を理解し、適切な形状を選定することで、効率的で高精度な加工が実現できます。
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